UAEにおける銀行対応 - 口座開設と年次コンプライアンス確認-

UAEでの生活またはビジネスを開始するにあたり、銀行口座の開設は不可欠ですが、場合によっては口座開設に多くの時間を要するケースも散見されております。
特に、法人の場合は口座開設が無事完了しても、年次でのコンプラアンス確認で問題があれば即時に口座凍結など、厳しい対応が行われることもあります。
そこで、当該記事ではそのような銀行対応の方法や近年の動向について解説致します。

この記事を読んだら…

  • UAEにおける主な銀行が分かる
  • 個人・法人での口座開設のポイントが理解できる
  • 銀行口座開設後の留意事項が分かる

第1章: UAEにおける主要銀行

UAEの銀行は全てNational Banks Federationに加盟する必要があり、現在(2024/5/1)では、合計57の金融機関が加盟しております。また、その内訳として以下のように分類されています。

①National Bank (国有および商業銀行)
国有および商業銀行が13行登録されています。日本でいう、メガバンクや地方銀行というイメージに近いです。預金、為替、融資、投資、その他金融商品など幅広い金融サービスを展開しております。

主な銀行:First Abu Dhabi Bank(FAB), Emirates NBD, Mashreq, Rak bankなど

②Islamic Bank (イスラム銀行)
イスラム銀行はイスラム金融のルールに準じた事業を展開しており、6行が登録されています。融資を非営利とみなし、商取引の範囲から除外しています。イスラム銀行が提供する融資はすべて無利子でなければなりません。尚、ムスリムでなくとも口座開設等の取引は可能ですが、UAEに居住する日本人からは少し遠い存在かと思います。


主な銀行:Dubai Islamic Bank, Emirates Islamic Bank, Abu Dhabi Islamic Bank

③Special Status  (特別認定銀行)
投資銀行やカード会社、その他フィンテック関連の銀行。近年増加傾向にあり、現在では9行が登録されています。

主な銀行:Emirates Investment Bank, Mastercard, VISA, WIO bank

④Internatioanl Bank   (インターナショナル銀行)

UAEのみならずグローバルで展開する銀行が29行登録されています。残念ながら、現在日本の銀行は登録されておりません。

主な銀行:HSBC, Barclays, BNP Paribas, Bank of China

上記4つの分類こそありますが、どの銀行でも口座開設は原則可能であり、その口座は日本同様に自由に使用することが可能です。

また、各銀行は多様なオプションを展開しており、それぞれの特徴を確認した上で口座開設することをお勧め致します。

2.5%~5%の普通預金口座があったりするので、株式配当よりも高くなる可能性もあります(一方で貸出金利も高いのでローン等の借入はあまりおすすめできません。)

尚、総資産額をランキング形式で見ると、
1: First Abu Dhabi Bank (302 $billion)

2: Emirates NBD Bank (202 $billion)

3: Abu Dhabi Commercial Bank (136 $billion)

4: Dubai Islamic Bank (79 $billion)

5: Mashreq Bank (54 $billion)

    引用:S&P Global_Market Intelligence

のようになっており、UAEの首都にある国営銀行のFirst Abu Dhabi Bank(FAB)がUAE国内における最大の銀行となっております。

 

⇒2017年にアブダビ銀行とファースト・ガルフ・バンクの合併によって設立されました。FABは、個人顧客、法人顧客、そして金融機関に包括的な金融サービスを提供しています。サービスには、預金、融資、投資、資産管理、証券取引、およびさまざまな他の金融商品が含まれます。 中東地域および国際的な金融市場で高い評価を得ており、そのサービスは多様で包括的です。

一方、日系企業や個人の多くも上記5つの銀行にて口座開設するケースが多く、私見ではありますが、Emirates NBDやMashreqは近年特に日系企業や日本人が多く取引する銀行になっているように見受けられます。

 

⇒2007年にエミレーツ銀行と国民銀行・ドバイの合併によって設立されました。エミレーツNBDは、常にイノベーションを重視しており、顧客ニーズに合った新しいサービスやテクノロジーの導入に積極的に取り組んでいます。UAEにおける最大規模の銀行の一つであり、地域の金融サービス業界においてリーダーシップを発揮しています。その安定性と信頼性は、多くの顧客や企業にとって魅力的な要素です。

⇒ マシュレク銀行(Mashreq Bank)は、アラブ首長国連邦(UAE)の中で最も古い銀行の一つであり、1967年に設立されました。FABやEmiraets NBDに比べ、規模は小さいものの、デジタルバンキング分野でのイノベーションを積極的に推進しています。モバイルアプリやオンラインプラットフォームを利用して、便利かつ安全に取引を行うことができます。また、銀行の窓口に行く回数も少なくなるため、特に日本人には人気のある銀行となっております。

第2章: 口座開設のポイント

各銀行により口座開設の手順および必要書類は若干異なりますが、凡そ以下の資料があれば口座開設の申請は可能です

<個人口座_必要書類>

  1. 本人証明書類: 有効期限内のUAEにおける本人証明に関する資料。パスポートおよびEmiraets IDが求められます。
  2. 住居証明書類: UAE国内の住居証明書(不動産契約書および公共料金に係る請求書など)
  3. 収入証明書類: UAE国内における給与額証明(勤務会社名義での発行されている必要があり、銀行によってはそのフォーマットも厳しく制限があります)
  4. 初回預入金: 口座によっては最低預入金額が決まっており、口座開設時に初回の預入金を求めるケースがあります。

<法人口座_必要書類>

  1. 商業ライセンス: UAE法人の商業ライセンス
  2. 定款: UAE法人の基本・付属定款
  3. 銀行取引確認書類:過去約6ヵ月分の法人および関連個人の銀行取引証明書
  4. 住居証明書類: UAE国内の法人オフィス住居証明書(不動産契約書および公共料金に係る請求書など)
  5. VAT登録証明書: ※既に税務局へ登録をしている場合
  6. 法人概要資料: 株主構成、ビジネスモデルなど法人の基本情報が記載された資料
  7. 代表者資料: UAE法人の代表となる方の本人証明書類(パスポートおよびEmirates ID)
  8. 最終受益者資料(UBO): 株主となる法人および個人(全員分)の証明書類(定款やパスポートなど)
  9. 取締役会決議資料: 取締役会の決議事項一覧、および議事録※法人の場合は会社の規模・所在地により提出資料が大きく変わりますため、最低限必要とされる資料のみを掲示しています。詳細は各銀行に確認ください。

個人の場合、1~数営業日程度での口座開設が可能であり、必要資料さえ揃っていればストレスなく口座開設ができるケースが殆どです。

一方で、法人の場合は、親会社の詳細情報や商業ライセンスに記載されたActivityにより、口座開設までに数か月を要することも散見されます(特に近年はUAE国内におけるコンプライアンス強化の動きもあり、日本のプライム上場企業の子会社であっても口座開設を拒絶されることも多くあります)。

第3章: 銀行コンプライアンス対応のポイント

各銀行はUAE政府からの要請に従い、顧客のコンプライアンス確認を定期的に行う必要があり、株主に関する資料や商業ライセンスの提出が求められることがあります。
そのため、法人情報(商業ライセンスや住所等)の変更があった際は、早めに銀行に通知するようにしましょう。これには親会社などの株主情報も含まれますので、UAE国内のみならず日本本社側の動きも注視しておく必要があります。

また、時価総額が数兆円にも上る日系グローバル企業であったとしても、親会社の代表取締役の個人情報(パスポートコピーなど)の提出を求められたりするケースがあり、この提出に時間を要したり、提出できなかったりするだけでも銀行口座が凍結されることもあるので、留意が必要です。

米国や欧州と異なり、企業規模に応じた融通などはないので、このあたりは日本本社側でもご認識頂くことが重要です。
※逆に言えば、UAEでのコンプライアンス意識は急激に高まってきているといえます。

第4章: まとめ

UAEにおける各銀行は魅力的な金融商品を多数有しており、またデジタルバンキングにも注力をしていることから自由に取引を行うことが可能です。一方で、UAE国内のコンプライアンス意識の高まりもあり、口座開設や定期コンプライアンス対応には労力を要する場合もあるので、その場合は当社のような外部コンサルタントを積極的にご活用頂ければと思います。

引き続き、日系企業のケーススタディや最新情報についてアップデート致しますので、引き続き本ブログをご参考頂ければ幸いです

上記、UAE銀行対応に関するお問い合わせは以下よりお願い致します
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